Go to Potosi ポトシの鉱山を見学。暗闇で汗を流す男達の物語
ウユニからポトシへ来た目的は、鉱山を見学すること。ポトシには、セロ・リコという銀などが取れる山があり、この街の多くの人が鉱山作業員として従事しているらしい。
●ポトシで鉱山ツアーを申し込み
ポトシの鉱山ツアーは、午前と午後の2回。
ポトシへ到着したのが、昨日の深夜なので午前中にツアー決めをし、午後から参加することに。
事前に得ていた情報だと、カテドラルに隣接する通り「Lanza」にあるSilver Tourが主催のため安いと聞いていたが、行ってみると残念ながら今日は休み。
そのため、近くの「コアラツアー」という旅行代理店にツアー内容を聞きに行くと、内容がいい感じ。
今夜のラ・パス行きの夜行バスのチケットも合わせて買うと、ディスカウントもしてくれたので、ポトシの鉱山ツアーはここで決定。
○ポトシの鉱山ツアー費用:1人 80ボリ
○ポトシからラ・パスへの行き方
ポトシのバスターミナルは市内から離れており、バスチケットを買うのは時間とお金が無駄にかかってしまう。そのため、旅行代理店で鉱山ツアーなどと一緒に買うのが便利。
ちなみに、バスチケットの旅行代理店発行手数料は、20ボリの上乗せが相場。
ポトシからラ・パスのバス運賃は、スタンダード30ボリという格安からあり、最高級のカマでも80ボリ。(旅行代理店でお願いするとそれに20ボリ上乗せ)
ボリビアの物価って素晴らしい。
ポトシからラ・パスへの移動時間:1人 100ボリ(カマ)
●鉱山作業員へのお土産にダイナマイトを買う
午後13時からの鉱山ツアー開始に合わせ、旅行代理店へ向かう。
すると、ポトシの中心部11月10日広場では、何やらお祭りが開催されていた。
旅行代理店の人に聞いてみると、選挙か何かでボリビアの大統領がここに来ているらしい。
お祭りで中心部周辺は込んでいたため、ちょっと離れた場所まで歩きツアーバスに乗る。
最初の目的地は、服の着替え。
全身鉱山用のウェアに着替え、長靴とヘルメット、ライトを装着。
その姿で皆車に乗り込むのだが、車内の風景はまるでこれから作業に向かう車のよう。
次の目的地は、鉱山作業員用のマーケット。
ここで鉱山作業員へのお土産に、ジュースやコカの葉、ダイナマイトなどを購入。若干特別価格で高かったが、これも過酷な環境で働く作業員のためか・・・。
続いて立ち寄ったのが、鉱山で取れた原石を精製する工場。
大雑把な機械がウォンウォンと鈍い音を立てながら動いている。
生成段階が進んでいっても、機械は大雑把なまま。
そして出来た銀の最終段階の製品を25~30USドル/kgでアメリカや日本、中国などに販売するらしい。kg当たり30ドルなんて、銀とは思えない価格だが、最終段階の製品はまだまだ銀には程遠く、きらきら光る土といった感じ。
ガイドが言う。
「これが、ボリビアンテクノロジーさ。」
最終製品でこの売り上げであれば、末端の作業員にどれほどの給料が行き渡るのだろうか。
●狭く暗い過酷なポトシの鉱山の中で働く男達
ポトシの鉱山セロ・リコへ到着。
はじめはちょっとした探検気分でガイドに着いていき、狭い坑道を進んでいく。
しかし、奥へ続く道はどんどん狭くなり、這い蹲らないと進めないくらい狭い箇所も。そして、ものすごい砂埃に、マスクをしてても咳き込む。また、ぬかるんでいる箇所ではかなり足場が悪く、それに加えてこの中は蒸し暑いため、自然とヘルメットから汗が滴り落ちてくる。
ただでさえそんな環境なのに、ここは標高4,000mという高所でもある。あまりの過酷なツアーのため、8人のツアーメンバーのうち途中で2人が脱落。
うちらはただ歩いているだけなのに、この環境の中で力仕事をしている作業員っていったい。。
梯子を使って縦穴を降りたり、ヘルメットをぶつけながら横穴を進んでいくと突き当たりで何やら作業員が石をスコップですくっている。
どこからか採掘してきた石をトロッコに乗せここへ運んでくる。そして、地上へ搬出するため、トロッコからかごに石を乗せかえる作業をここで行っているわけだが、この工程すべて手作業。
何十トンとあるトロッコを男4,5人がかりでここまで押してきて、台車を横に倒し石をぶちまける。出来た石の山を何度もスコップですくい小さなかごへ乗せる。小さなかごを上の階で引き上げる。
自分でぶちまけた石が邪魔でトロッコが進まないため、そこにいる全ての作業員でトロッコを持ち上げ、レールの見える部分までトロッコをずらす。
ここでは、こんなことをひっきりなしにやっている。
次に向かったのは、作業員の休憩場所。
といっても、地べたに座ってやっとという広さの狭い暗いトンネルの突き当たりのスペースがあるくらい。
そこでは、ベテランのおじさんと青年が休憩していた。
ガイドが色々な質問をする。
「何歳からここで仕事してる?」とか「給料はどう?」なんてぶっちゃけた質問も。
今17歳だという青年は、コカの葉で頬に一杯にしながら浮かない顔でぽつぽつと答える。
「14歳からここで仕事をしている。金なんてちょっとしかもらってない。」
ガイドは言う。
「彼のお父さんが、彼が14歳のときにこの場所を用意してくれたんだ。。」
ガイド自身の父親も元鉱山作業員で、長年の過酷な作業がたたったのか既に亡くなってしまったらしい。
14歳から既に彼の人生が決まっている。
そして、既にそれを悟ったような表情で、その後もぽつぽつとガイドと話をする。
だって彼はまだ17歳。
暗い穴の中で食事もせず、ただコカの葉だけを噛みながら、朝から晩まで働く。
仕事のやり方も、仕事自体を選ぶ権利もまるで無いかのように。
ここの鉱山の中にトイレはない。これはどういうことか。
トイレがないということは、行きたくても行けないということ。
その為、鉱山労働者達は朝から晩まで食事を摂らず、ただひたすら暗闇の中で働いている。食事は朝と、仕事終わりの夕食のみ。
その重労働をまかなうものは?”コカの葉”
写真を見れば気づくと思うが、鉱山労働者は皆、頬をコカの葉で一杯にしている。
コカの葉には覚醒作用があるので、それで空腹を紛らわしているのだ。
おみやげにと渡したコカの葉。
これが彼らの食事なのだと思うと、複雑な気持ちにならざるを得ない。
その昔、鉱山で働く作業員は大規模なデモを起こし、選挙権を勝ち取ったらしい。しかし、今日この街にボリビアの大統領が来ていても、彼らは町でやっているお祭り(デモ)には参加せず、ただ黙々と石を運んでいる。
選挙権を勝ち取ったとしても、過酷な労働環境や貧しい生活は一向に改善せず、今となっては諦めの境地なのか。
鉱山出口へ向かう途中、たくさんの資材を積むトロッコを押すのをガイド筆頭に手伝う。
しかし、ろくに整備もしてないレールは、まるでその役目を果たさず、すぐに台車がレールから外れてしまう。
その度に、作業員全員で「せーの」とトロッコを持ち上げて、レールに戻す。また、すぐにトロッコはレールの外にいってしまうのに。
作業員には、どこまでの裁量が与えられているのだろう。どう見てもこの鉱山全般かなり効率が悪い。作業スペースをもう少し広くしたり、もう少し機械を入れたり、もう少しレールをちゃんと直したり、、それだけでかなり効率が上がるはずなのに、直すお金をかけるならその分作業員を安い賃金で投入しろということなのだろうか。
ツアーの途中でガイドから聞いた。
「日本で作っている多くの電化製品の基盤にも、この銀は使われている」
産業の末端で世界を支える労働者は、世界中にたくさんいる。ここで見た現実は、ほんの一部だろう。安い賃金で文句一つ言わず、ただ黙々と決められた仕事をこなす。仕事の改善を試みる裁量も与えられず。
1日の作業を終え、外で休憩している作業員のおじさんが声を掛けてきた。
「おお、日本人か。今日本大変みたいだな。がんばれよ。」
世界は一つだ。
1人1人が今出来る精一杯のことを頑張るしかない。
●夜行バスでポトシからラ・パスへ
ポトシの鉱山ツアーは、結構きつかったが色々と考えさせられた。
21時半発の夜行バスに合わせ、タクシーで新バスターミナルへ。
さっきまでの鉱山の町の質素な雰囲気とは対照的に、新バスターミナルは近代的で立派な作り。
ちょっとした先進国のバスターミナルよりも立派だ。
全く異なる資本とはいえ、狭い坑道の中のズレたレールのことを考えてしまった。
定刻の21時半、夜行バスでラ・パスへ向けて出発。
かつや
関連記事:
No comments yet!